第9話
ネコ街の喫茶店

 カメラをぶらさげて、ネコを探しながら街を歩き回っていると、素敵な喫茶店でひと休みしたくなります。 殊にうだるような暑さの夏などは、途中で喫茶店で休むことが必須になります。 私にとって、ネコの街の喫茶店を把握しておくことは、重要なポイントなのです。  

  しかし、新宿も駅から離れたところになると、当然喫茶店の数も減っていきます。 そこで「素敵」な喫茶店に出会えるかどうかは、私の運にもかかっています。
  ちなみに私の言う素敵な喫茶店の条件とは、
1.外観が素敵(静かで雰囲気があって、くつろげるスペース)
2.メニューが素敵(食事、デザートともに豊富)
3.味が素敵(あたりまえか・・・) さらに椅子に背もたれがあって、少し薄暗くて、紅茶のポットサービスがあれば言うことないのですが、
最も重要な条件として、 4.コーヒーがおいしそう というのがあります。
実は私は紅茶党でして、コーヒーはあまり飲まないのですが、 それでもなぜかコーヒーが美味しそうな店で紅茶を飲むことに喜びを感じるのであります。  

 前置きが長くなりましたが、ネコを探しながら出会った一件の喫茶店をご紹介しましょう。  
その日私は、西新宿5丁目界隈で落ち着ける場所を探していました。十二社通り沿いなら喫茶店の一つや二つあるだろう・・・と思ったのですが、歩けど歩けどなかなか見つかりません。ヘトヘトになってやっと一件見つけました。  

 その店は、カウンターと机が数台あるだけのこじんまりとした店でしたが、 コーヒーの入れ方が、「サイフォン方式(?)」とかで、色々な種類のコーヒーが置いてあり、 いかにもコーヒーが美味しそうな店でした。「これは当たりか?」と思いながら、勇気を出して入ったわけです。  
 私が机の一つに落ち着いて、アイスティーを啜っていると、50才位のマスターが話しかけてきました。
「いいカメラ持っているね。大学生か。君、出身高校はどこかね」
話の流れからすると、大学名を聞かれそうなところを、出身高校を聞かれたことにうろたえつつ答えると、 「ふむ。S学園ね。そういう顔をしているね。一目でそうだと思ったよ。しかし最近S学園はいいうわさを聞かないね。偏差値が異常に下がって不良が多いね」 と話しはじめました。その話を聞いて母校の現在を憂いた私は、後輩に聞いてみたところ、「別 にそんなことはない」という返事でしたが。  
 マスターの話はまだ続きます。 「君はネコを撮っているのか。この店の裏は野良ネコが多くてね。そこのおじさんは、 (と、客の一人を指しながら)有名なカメラマンだから、聞いてみるといいよ。 ねえ、・・・さん、彼女、ネコを撮ってるってさ」 と、マスターが顎ヒゲのついたお客さんに話しかけると、 「ふん。まあいんじゃない。テーマがあるのはさ」 と、カメラマンはあまり関心なさそうに答えました。 「良かったねえ。悪くないってさ。彼は一流のカメラマンだからね。良かったね」 こんな調子でマスターの話は続きます。    

 店には私の他に3人の客がいたのですが、それぞれ別の机に座りながら、店全体でマスターの話に参加するという不思議な光景が繰り広げられました。そのあと一人の青年がカメラマンに、 「僕はレースが好きなんですけど、走る車を綺麗に撮るこつはなんですかねー」 と話しかけ、そのことで話が盛り上がりました。 その青年と一緒に店を出たのですが、青年曰く、 「あのマスターは前は違う仕事をしていて、儲かったんで、あの店を開いたんだ。あの店は全然儲かっていないけど、マスターの趣味だね」 ということです。この店に入ったことが当たりだったのか、今をもって謎ですが。

  最後に一枚、写真を紹介します。 この喫茶店の裏にある、商店街で撮影したものです。 (このネコについて、詳しくは、ネコグラフィーの第5話を御参照下さい) 頭かくして尻隠さず、な光景です。

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