第7話
都庁と廃墟とネコ

 新宿中央公園に隣接する 公園通りと十二社通りの間に挟まれた地域には、 かつて何件もの廃屋に挟まれた広い荒れ地がありました。 西新宿六丁目といえば、もっと西新宿駅よりにある、 公園通り沿いの旧アパートは有名で、 よく写真雑誌などに載っているのですが、 この荒れ地は通りから見えない奥まったところにあるせいか、 新宿にありながらさほど知られていないようです。 わたしが知っているのは、 映画「不夜城」で金城武がこの廃墟の前を歩くシーン (・・・と言っても、あっという間ですけど) くらいです。 またこの近くには、車を二段に収納する広い駐車場があって、 都庁を背景に連なるその無機的な姿は、 荒木経惟さんの写真にたびたび登場しています。  

  このての廃墟は大抵すぐに取り壊されるものですが、 ここは少なくとも二年以上放置されていたので、 私は何となくぼーっと散歩をしによく来ていました。 蔦がカラフルに絡まった廃墟や、 火事でもあったのか、焦げた家の柱がむき出しになっている家もありました。 アジア系の男性二人が、(家を解体する人達?) 廃屋の屋根の上で話す声が、風に乗って聞こえてきました。
「This is typical ...in Shinjuku...」
この異景も、見る人によっては、 典型的な新宿のようです。  

  この荒れ地もやはり捨てネコのたまり場で、 冷蔵庫やふとん、レコードプレーヤーといった粗大ゴミの うえで、親子のネコが身を寄せあったり、 独り身のドラねこが、ぽつんと寝ていたり(写 真参照) していました。 警戒心の強い、あまり懐かないネコたちですが、 毎日近くに来るお弁当屋さんから御飯をもらっているのか、 お弁当屋さんの車の下にたむろしている姿が見られます。 また、若い女性が、餌の袋を持ってやってきました。 まあ、このねこかわいいですね・・とおしゃべりする雰囲気でもないので、 言葉少なに、餌だけあげて去っていきました。 その二週間後、ふたたび同じ場所で彼女と会いました。  

  高層ビルを背景にして、 夏のはびこった雑草の中を、秋の夕日輝くすすきのなかを、 ひっそりと暮らしているネコを見ると、 「世紀末な光景だなぁ」なんて思ったりしたものですが、 廃墟が全て取り壊され、新世紀になった今でも、 やはりそこはネコのたまり場なのでした。

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