第2話
西新宿八丁目のネコ(その1)

 西新宿の一丁目から八丁目の界隈は、高層ビルあり、公園あり、商店街あり、廃墟あり、ビジュアル系ロッカーありで、まるで闇鍋でも食べさせられているような濃厚な地帯です。  
  今回は一番離れた八丁目から見ていきましょう。  

  八丁目付近は、丸の内線の西新宿駅からアクセスするとすぐなのですが、私などはいつも新宿からてくてくと青梅街道を歩いているうちに、いつの間にか着いてしまうのです。  
  青梅街道と十二号線が交差する成子坂下を一歩入った路地の入り口に、「気軽な成子坂飲食店街」という看板(指をさしたイラスト付き)があります。さっそく奥に進むと、営業しているのか謎な感じのスナックや旧い居酒屋、ひと昔前を彷佛させる美容院などが少々並んでいますが、ちっとも気軽な雰囲気ではありません。またこの路地は、「スナック赤いバラ」「グリコ牛乳」「新宿マネキン紹介所」といった面 白い看板のある通りでもあります。 私はここで、ノラ猫としては信じられないくらい可愛い眼のくりくりっとした子猫を二匹発見しました。まん丸のエメラルド色の眼をしたトラ猫姉妹です。他にも黒いのや三毛などがいて、このあたりを「気軽な野良猫鑑賞街」と名付けたのでした。  

  ある日この通りで猫の写真を撮っていると、「KODAK」のジャケットを着たおじさんが、「ねえちゃん猫撮ってんの? いい男撮った方がいんじゃないの?」と話しかけてきて、「うちには十万円の金魚がいるからよ」と私を「グリコ牛乳」の店内へと誘い、太った金魚を見せてくれました。  
  さらにおじさんは「うちには猫もいるからよ」と言うと、太った猫を肩にのせて、のそっと通 りに出て来たので、私はすかさず写真に撮りました。(写真参照) このドラエモン似の猫は、「太郎」といいます。太郎は立派な毛並みの猫でした。  

  あれから一年後、ひさしぶりにこの通りを訪れたら、例の眼のくりくりした子猫が、すっかりふてぶてしい感じのノラ猫に成長していて、呆然としました。片目がつぶれて、でっぷり太っていて、「こいつが家猫だったら可愛く成長したろうになぁ」としみじみ思いました。

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