第1話
「ホテル街のネコ」

「新宿」と聞いて、まず何をイメージしますか? 高層ビル・雑踏・歌舞伎町・デパート・ターミナル駅など…… でももしかしたら、 こうした繁華街のイメージだけではない何かを想像するかもしれません。 例えば、のどかな中央公園と隣接した土地に、 誰も気づかない廃屋地帯があったり。 高層ビルを望む靖国通りを一歩はずれると、 木造のアパートがひしめいていたり…… こうした裏側の新宿にもまた格別の味があります。 さまざまな要素をそのまま包み込んでしまう独特の空気こそが、「新宿」なのかもしれません。

  3年前のある日、私は買ったばかりのEOS55を持って、 新宿をうろうろしていました。 スナップといえば大都会新宿だっ、と歩き回ったものの、 ちっともいい写真が撮れません。 けばけばしい歌舞伎町一丁目を通り抜けて、 一本道を渡った途端――ぐっと人間が減って、 寂しいホテル街になってしまいました。 無機的に並ぶビルの合間を、 人びとは用を済ませたらそそくさと立ち去るのでしょうか。 特徴のあるものといえば、 街の中心にあるバッティングセンターくらいなもので、 それも微かに音をたてるだけ。

  街を一周して、足も疲れ、夕闇も迫ってきたころ、 目の前に白猫を発見しました。 写真を御覧ください。 猫は、まるでそこにポンと置かれたように、 道のど真ん中でじっ...としていました。 夕暮れ時の暗い路地に、その白だけが生えています。 (こんなところに猫が)と思いながらそっとシャッターを押しました。 こんなところに――実は猫がよく出没することは、 あとになって知ることになるのですが。 その日私は、(構図はふつうだけど、何だかいい写真が撮れたな) と自己満足しつつ帰宅したのでした。

「新宿ネコグラフィー」は、 こんな風に主のように新宿に棲むネコたちのお話です。 どうぞこれからもお付き合いくださいませ。

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